第4夜 Vita Nova「ancient flowers」 (CD)

「最新の情報はまずない」とか言っておきながら新しいものばかり取り上げてきたので、ここらで古いものも取り上げます。とは言っても私の中では最新情報。つまり遅れてるって事ですね。

Vita Novaは96年に「古楽ポップ」というふれ込みでデビューしたユニットです。「ancient flowers」はそのデビューアルバム。
吉野裕司がプロデュースをし、曲ごとに参加アーティストが変わるという非常に特殊な形のユニットなのですが、てんでばらばらなものを寄せ集めたような感じはなくむしろしっかりとまとまっていて、アルバムごとに明確なコンセプトのようなものを感じ取る事ができます。

で「ancient flowers」なのですが、古楽&トラッドを吉野裕司がアレンジしたものが中心になっています。Vita NovaのCDの中で最も古楽的と言ってもいいでしょう。
中には「Scarborough fair」や「Greensleeves」など知名度の高い曲も入っているのですが、あまりにも大胆なアレンジのために、今まで聞いたこともないような古楽の世界を垣間見ることができます。
特に「Scarborough fair」はSIMON and GARFUNKELの歌っているものとはまったく違っていて、最初に聞いたときには「Scarborough fair」だと認識できない程です。なにせメインメロディーからして違うのですから。

不思議なのはそれだけ特徴的な曲がそろっていながら全体としてみるとバランスが良いということ。 13曲中Instrumentalが8曲あるにもかかわらず、決してそれを多いとは感じないのです。それはVocal曲がくどくならないように的確に配置されているからで、もちろんVocal曲がそれだけ重厚だからこそのバランスだと思います。

古楽は一般にはあまりなじみのないジャンルかもしれませんが、紅茶とビスケットでも並べながらじっくりと聞いてみるのはいかがでしょうか。いや探すのは大変ですけどね、Vita Nova。


文責:柚木千夜

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